シゲの話しも終わり酔いと焚き火による顔のほてりとは裏腹に先程にも増して全身総毛立ち、
風の音や後ろの林でする『がさっ』という音に身体中が鋭敏に反応していました。
何しろ回りは暗闇の山でございます。
時間はいつしか0時を回り日付が変わっておりました。

『まだあるかい?・・・そろそろ・・・』と私が言いかけた時
シゲが『こじさん、あのHさんから聞いた話はどう?あれ聞きたい』
『あぁ、あの話し・・か・・・』

当時の私は霊感もそんな体験もありませんでした。
まっ霊感の方は今でもありませんがその手の話しは好きで
その当時もキャンプの時など皆でよくしておりました。
その話しは以前バイク屋をやっていた時の
取引先の社長のHさんから聞いた話でした。

Hさんは私より五つほど年上で若い頃は生まれ育った都内で
地元の仲間とバイクで走り回り色々とヤンチャしていたそうで
まぁ世代的にはに暴走族のハシリの年代の方でした。

ある日、皆で走ろうといつも集まる酒屋の前の広場へ集まったそうです。
その日は珍しく昼間、走ろうと集合をかけたそうです。
皆がボツボツと集まりあとはリーダーを待つばかりでした。
待ち合わせの時間を5分過ぎ・・・10分が過ぎた頃、

『○○さん、おせぇなぁ!』

誰かが少しばかり苛立たしそうに吐き捨てるように呟いた時、
遠くから聞き覚えのある排気音が聞こえてきました。

『おっ来た来たっ!』

と言い終わるか終わらないかのうちに爆音とも思える排気音を響かせながら
リーダーの乗ったバイクは皆の前で止まり・・・
もせずそのまま皆の前を行き過ぎ、緩い左カーブをそのまま直進し
反対車線側のその先にある酒屋と隣家の塀の間に引き込まれるように
吸い込まれていったそうです。

『グシャッ!』


鈍い音が響き辺りが一瞬凍りついたように静寂に包まれました。

『・・・・・・・。』


『見・・た・・・?』  誰かが呻くように呟きました。

『見た・・・・。』   他の誰かが搾り出すような乾いた声で呟きました。


十数人の人間が、その時、同時に見たものは・・・
とてもこの世の光景とは思えないものだったそうです。

かなりのスピードだったにもかかわらず両手をハンドルから離し
その腕を狂ったように振り回しながら

『やめろーっ! 離れろーっ!』


と、ものすごい形相で叫びながら

背中にしがみついたびしょ濡れの青白い顔をした10歳くらいの男の子


を引き離そうとしているリーダーの姿でした。

『わぁあぁあああ~~~っ!』 
 
『グシャッ!』


結局、リーダーはそのまま帰らぬ人となったそうです。
偶然なのか亡くなったリーダーのご実家は酒屋さんを営まれていたそうでございます。

実はこの話しはまだ終わりではありません。
プロローグとなるようなエピソードがあったのです。
さかのぼることひと月ほど前の事だったそうです。
皆で千葉方面のとある海岸へ海水浴へ行った時のことでした。
その海岸は潮の流れも速く遊泳禁止になっているところも多く
毎年、溺れて何人か亡くなっていたそうです。

ひと泳ぎして砂浜で休んでいると『見つかったぞー!』
という声とともに慌ただしく数人の監視員や警察官が
少し離れた海岸線の人だかりを目指して走って行きました。

『そういやぁ、さっき誰か溺れたって言ってたなぁ』
『ちょっと行ってみるか』

面白半分でリーダーを含め数人がその人だかりへ近づき
人だかりをかき分け最前列へ出ると
毛布の上に今しがた寝かされたと思われる
びしょ濡れの青白い顔をした10歳くらいの男の子の姿があったそうです。
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